寝る前に水を飲むのは、健康のためにもダイエットにも良い、と聞いたことはありませんか。寝る前の水は就寝中に失われる水分を補うことができ、なおかつダイエットや美肌にも効果があると言われます。
しかし、その根拠は何でしょうか。
この記事では、寝る前の水で得られる効果や注意点について、
・就寝中に失われる水分量
・ダイエット効果
・美肌効果
を踏まえて解説します。

この記事でわかること
就寝中に失う水分は500ml以上
就寝中、私たちは知らず知らずのうちに汗をかいています。その間に失われる水分は500ml以上です。
夏は暑いので汗をかくことをイメージしやすいですが、冬も同じくらいの水分が寝ている間に失われています。
この量は体重の1~2%ほどあり、寝ているだけでけっこうな水分が体内から失われているのです。
特に、暑い時期になると汗を大量にかくために、もっと多くの水分を失います。体内から水分が失われると、軽い脱水症状を起こし、様々なトラブルを引き起こす原因となるため、注意が必要です。
では実際に、
・どういう状況下で失われて生きやすいのか
・水分が失われるとどうなるのか
を解説していきます。
汗と呼気で水分を失う
寝ている間に呼気や汗で失う水分は500ml以上とされていますが、年齢や体質により多少は異なります。
人によっては、一晩で1リットル近くの水分を失うこともあります。
一晩でこれほど多くの水分を失うと、体に弊害をきたす危険があり、注意が必要です。
しかし、ほとんどの人は寝ているうちにそれほどの水分を失っているということに気づきません。
のどが渇いた、軽い脱水症状になっている、という認識はなかったとしても、寝起きが悪かったり、夜中に目が覚めて寝付けなかったりすることがあるのではないでしょうか。
こういった就寝中や寝起きに感じる不調の原因は、就寝中に水分が失われたために起こる軽い脱水症状によって引き起こされるものです。
多くの方はこうした寝起きや寝つきが悪いとき、原因に脱水症状があるとは考えていないでしょう。
つまり、水分不足が原因ということに気付くのに時間がかかるというところに、水分不足の落とし穴があるのです。
深い眠りにつくために必要な深部体温の低下
ここで人が眠りに入るために必要な「深部体温の低下」について説明しましょう。
人がぐっすり眠るためには、体内の温度である「深部体温」を下げる必要があります。
体温が下がる勾配はゆっくりでなく、急勾配の方が良いとされています。
この深部体温が下がることで、メラトニンホルモンが分泌されよく眠れるようになるという仕組みです。
しかし、体内の水分が足りないと、汗をかくことで保っている体温調節がうまくいかなくなります。
体温の調整ができないことで、深部体温の勾配にも影響が出てしまい、よく眠れないという状態になるのです。
暑い時期はさらに多くの水分を失う
暑い時期になると、気温が高くなるのはもちろんのこと、湿度も影響して汗をかきやすくなります。
汗をかくということは、普段以上に体の多くの水分を失うことになり、人によっては熱中症を引き起こす恐れも出てきてしまうのです。
熱中症をおこすと、脱水症状により体温調節ができなくなる状態になります。
熱中症になると栄養素を体内に取り込んだり、老廃物を排出したりする体内の活動が妨げられるだけでなく、ひどくなると出る症状は、熱性けいれんや40℃以上の発熱といった症状が出ることもあります。
場合によっては意識がなくなることもあり、このようなトラブルを防ぐためにも、寝る前の水分補給がとても大事です。
水分を失うことで脳梗塞や心筋梗塞になることも
就寝中に水分を失ったままにしておくと、日本人の死亡原因に多い脳梗塞や心筋梗塞を起こす恐れも否定できません。
こうした病気の原因の一つとして、脂肪や高血糖が挙げられます。
病気の兆候が少しでもある方や高年齢の方が水分不足による脱水状態に陥ると危険です。
血液が濃縮され、病気を引き起こしやすいドロドロした状態になってしまう恐れがあります。
もちろん、危険因子を持つすべての方が、水分不足によりこうした病気を引き起こすわけではありません。
しかし、いつだれがこのような症状を引き起こすかはわからないですから、用心しておくことは大事でしょう。
特に高年齢の家族がいる場合は、若い人よりもリスクが高いですから気を付けてあげた方が賢明です。
寝る前の水のダイエット効果
これまで寝る前の水分補給による健康効果を紹介しましたが、ここからは寝る前の水におけるダイエット効果を説明します。
具体的には、
・むくみ解消
・成長ホルモンの影響や新陳代謝による影響
についてです。
寝る前の水は身体がむくむとか、太るといったことが言われることがあります。
こうしたことを恐れて、寝る前には水を飲まないと決めている方もいるのではないでしょうか。
ここで説明するのは、誤解も払拭できるダイエット効果です。
睡眠中の血流を促し代謝アップ
寝る前の水により、睡眠中の血流が促進され、体内に栄養や酸素が行き渡るようになります。
その結果、細胞が活性化され、代謝があがります。
代謝というのは、体内に取り込んだ食べ物を、体を動かすために必要なエネルギーに換えることです。
そのため、代謝が上がると、食べ物が体を動かすためのエネルギーに多く換わることで、脂肪燃焼効果が得られます。
多くのエネルギーが消費されやすくなるため、痩せやすい体質に変わりやすくなるのです。
ダイエットしても痩せない、あまり効果がない、という人は原因の一つに代謝の低下が考えられます。
そこで、寝る前の水を試してみるだけでも代謝が上がり、体が痩せやすくなり、効果を感じられるでしょう。
老廃物を排出するのでむくみ解消に
寝る前に水を飲むことは、体内の老廃物を排出しむくみ解消を促すのに効果的です。
寝る前に水を飲むことでむくみと思われがちですが、実はそうではありません。
寝る前に水を飲むことによって、就寝中の発汗や利尿作用が活発になります。
汗や尿が出ることで、老廃物が排出されるため、むくみ解消効果が得られるのです。
排出される老廃物の多くは油脂に溶けやすい脂溶性のもので、何もせずに放置しておくと、体内脂肪の中に蓄積されてしまい、ダイエットを妨げる可能性があります。
そのため、早めに排出することがダイエットには不可欠です。
そもそもむくみとは、何らかの原因によって血液やリンパ液の流れが悪くなり、老廃物を体外に排出できない状態のことを指します。
老廃物が排出されない原因の一つとして考えられるのは水分不足。そのため、寝る前に水を飲むということが大切なのです。
よく眠れるので成長ホルモン効果で痩せる
寝る前に水を飲むことでよく眠れるようになると、成長ホルモンが分泌されることでダイエット効果につながります。
なぜならば、成長ホルモンには脂肪を分裂させたり、筋肉を作ったりする働きがあるからです。
成長ホルモンというと、身長を伸ばすためのものであり子供のころに必要なものと思われがちですが、大人になってからも分泌されます。
大人にとっても、体内の脂肪を分解したり筋力をつけたりすることは必要です。
そして、成長ホルモンが働いて脂肪が分解されたり筋力がついたりすることで、きれいに痩せる効果が得られるようになります。
成人の体内は約6割が血液と水分です。
寝る前の水によって、水分を補うことで新陳代謝が活発になります。
新陳代謝が活発になれば、古い細胞が新しい細胞へと切り替るために、血流促進、体温維持にも効果的です。
体温が上がれば、体温を適温である36.5℃に保ちやすくなり、免疫細胞を活発化させます。
血流促進となれば、体中に栄養成分が行き渡り、基礎代謝アップにも効果的です。
基礎代謝が上がれば、普通に生活しているだけで体内のエネルギーを消費しやすくなり、痩せやすい体を作ると考えられます。
寝る前の水はダイエットのみでなく美肌効果も
ここからは、寝る前の水と美肌効果についてお伝えします。
適度な水分を保った、肌荒れやニキビとは程遠い赤ちゃんのような美肌は多くの方々のあこがれです。
誰もが理想とするような美肌を作るのにも寝る前の水はとても深くかかわっています。
水分を保った潤い肌に
はじめに紹介した通り、就寝中に失われる水分は約500ml、ペットボトル1本分もの量です。
寝ている間に失われる水分というと、体内の水分がなくなるイメージがありますが、肌の水分も失っています。
肌の水分が減ると肌表面にダメージを受けやすくなるため、補うことが必要です。肌の水分を補うために、寝る前の水が役立ちます。
一般的に、多くの大人の女性は、寝る前のスキンケアで、メイクを落とした後に化粧水や乳液などでお肌に水分を補ってから寝ているでしょう。
こうしたスキンケアをしていれば、お肌の水分は保たれているように思われがちです。
しかし、スキンケアだけでは肌に補うべき水分は足りません。
肌を労わるためには、内外で水分補給が必要です。
外側からどれだけスキンケア用品を塗布しても、体内からの水分が不足していたら肌は美しくなりません。
寝る前にきちんと水を補給することにより、肌の内部にある真皮に栄養と水分が蓄えられます。
その結果、肌のターンオーバーが正常に行われ、肌に潤いが生まれるようになるのです。さらに皮下の血流が良くなるため、血色も良くなります。
真皮に新しい細胞が生成され、約4週間で表面の肌へと成長。やがて6週間目になると垢となり排出されます。
この繰り返しがターンオーバーです。
このサイクルの乱れが肌荒れにつながるだけでなく、老廃物が肌に残ることでくすみや毛穴の開きの原因になります。
肌荒れやニキビを防止する
肌の水分不足は、肌荒れやニキビも引き起こします。
肌荒れやニキビの原因は、上記で説明した肌のターンオーバーが乱れることです。
ターンオーバーの乱れの原因はさまざまなものがあります。
基本的には、生活習慣やライフスタイル、ストレスなどが考えられます。具体的には以下のようなものです。
・過度のストレスや疲労
・タバコの吸い過ぎ
・アルコールの飲みすぎ
・運動不足
・過度のダイエット
・野菜不足や脂肪分の多い食事
・体の冷え
・便秘
こうしたさまざまな原因によって、肌のターンオーバーの流れが乱れ、肌荒れやニキビは引き起こされます。
このような乱れを防ぐためには、寝る前の水がおすすすめです。
就寝中に失われる水分を補い、肌のターンオーバーを整えてくれることで、肌の状態を整えることができます。
寝る前に水を飲む注意点
これまでに寝る前の水の良さを強調してきましたが、ここからは注意点を説明します。
寝る前に水を飲むことは大切ですが、飲み方に気を付けることが必要です。
そこで、ここでは寝る前に水を飲むにあたって気を付けるべきことを次のような4点に分けて紹介します。
・飲み過ぎラインは500ml
・飲むスピードは「コップ1杯、ゆっくりと」
・夜中のトイレが心配な方、寝る前1時間
腎臓の病気がある方は医師に相談
腎臓の病気がある場合は、医師に相談しましょう。
水を多く飲むことで悪化させる恐れがあります。そのため、寝る前に水を飲むことが良いからといって、すぐに飲み始めることは避けるべきです。
特に慢性腎臓病の方は要注意です。
医師に相談し、どのくらいの量を飲むのが適切なのか、アドバイスをもらったうえで飲むようにしましょう。
500mlのペットボトルは飲みすぎ
人によっては、就寝中に500mlの水分を失うのだから、同じ量の水を飲めば水分不足を補えるように500mlのペットボトルを寝る前に飲めばいいと考えるかもしれません。
しかし、500mlは飲み過ぎなので気を付けましょう。
特に一気ペットボトルの水を飲み干すがぶ飲みは危険です。
短時間に大量の水を一気に飲むと、希釈性低ナトリウム血症になる可能性も否めません。
これは一般的に「水中毒」と呼ばれるものです。
考えられる主な症状は以下のような症状があります。
・頻尿
・極度な疲労感
・下痢
・むくみ
また、一気に飲むことで尿や汗として一気に水分が排出されやすくなり、かえって水分不足に陥りやすいです。
人によっては寝ているときに尿意を感じ、寝不足になることもあります。
コップ1杯をゆっくり飲む
寝る前の水はどの程度飲んだらよいものでしょうか。
おすすめは、コップ1杯とされています。
具体的には、大体150~250mlくらいです。
この水を一気に飲まず、ゆっくりと飲みほしましょう。
水は、冷たすぎると刺激が強すぎて、体に負担がかかります。
人によっては眠れなくなる可能性があるので、やめましょう。
おすすめは常温の水か白湯です。
成人の1日に摂取すると良い水分量
成人が1日に摂取すると良い水の量は、約2.5リットルとされています。
この中には食事で摂取する水分も含まれるので、飲み水として必要なのは約1.2リットルです。
正しい水分摂取で健康的に生活したい場合は、睡眠前後、3食の食事中、お風呂に入る前後、運動した後など8回に分けてこまめに水分補給しましょう。
以下に、上記で説明した1日計8回の水の飲み方の例を示します。
水を飲む時間配分の参考にしてみてください。
ある35歳の主婦A子さんの例です。
A子さんが1日に飲む水 | ||
---|---|---|
起床 朝6時 | コップ1杯の水 | 150ml |
朝食 朝7時 | 食事とともにコップ1杯の水 | 150ml |
家事の後 朝10時 | コーヒーと共にコップ1杯の水 | 150ml |
昼食 昼12時 | 食事とともにコップ1杯の水 | 150ml |
おやつ 15時 | お菓子や紅茶とともにコップ1杯の水 | 150ml |
夕食 19時 | 食事とともにコップ1杯の水 | 150ml |
入浴前後 夜21時 | コップ1杯の水 | 150ml |
寝る前 夜22時 | コップ1杯の水 | 150ml |
合計1,200ml |
A子さんが1日に飲む水
これで合計1,200mlの水を飲むことになります。
人によって生活リズムも異なりますし、生活環境も異なります。
そのため誰もがこの通り水分摂取することが望ましいとは言い切れません。
のどの乾いているときには、この時間外でも水分は摂取するようにしましょう。
夜中のトイレが心配なら寝る1時間前までに
寝る前に水を飲むことで、特に中高年の方などは、夜中にトイレに行きたくなるのではと不安になる場合があります。
その場合は、寝る前に就寝1時間前までに水を飲むようにしましょう。
もちろん1時間前に水分を飲むようにしても、夜中にトイレに行きたくなってしまうという人もいます。
個人差があるので、もしも寝る1時間前に水分を飲むようにしてもトイレに行きたくなる、という場合には、もう少し早めの時間に飲むようにしたり、水分の量を少し減らしたりして調整することが大切です。
まとめ
わたしたちは寝ている間に多くの水分を体内から排出しており、寝る前の水分補給は健康維持のためにも、ダイエットにも有効です。
寝る前の水は、血流を促し代謝アップになること、成長ホルモンが分泌されよく眠れること、新陳代謝が活発になることに効果があります。
また、体内に水分を取り込むことで、肌のターンオーバーが正常に行われるため、ニキビや肌荒れの予防も可能です。
水を飲む際には、一気に大量に飲まないこと、寝る前は1時間前にコップ1杯程度にしておくことに気を付けましょう。
また、腎臓疾患のある人は水を飲むにあたって注意が必要です。
寝る前の水は寝る1時間前に常温の水か白湯をコップ1杯、ゆっくり飲むことが大事です。
毎日継続していくと、健康維持はもちろん、ダイエットや美肌といった目に見えた変化を感じられるようになるでしょう。